「心愛?」


誰かがあたしの名前を呼ぶ。


誰?


あたしは振り向かなかった。


いや、本当は誰かなんてわかってる。


ここに来る奴なんて1人しかいない。


だからこそ、振り向くことができなかった。


「どうした?」


いつになく優しい声でそう言って、あたしの隣に座る。


もちろん、その相手は秀矢。


「話してみろ?少しは楽になる。」


秀矢はそう言って遠くを見つめた。


あたしはある程度、話すことにした。


秀矢なら、何も言わずに聞いてくれるとわかっているから。


泣いててうまく話せないあたしに、"ゆっくりでいい"と背中をさすってくれるんだ。


「...生徒会長に、キスされたの...。」


そう言うと、秀矢は何も言わずにただあたしを抱きしめた。