「車、単車、歩き
どれがいい?」


「え?あの、
かえ・・・るんだけど・・」


「帰る選択はない。
どれ?」


そう言いながら
私の顔の前に
その男の顔が至近距離で
近づいてくる。

茶色がかった、その瞳に
引き込まれそうになり
思わず、目をそらした。


「女、名前は?」

「優奈(ゆな)です・・・」

「で?優奈は
どれがいい?」

「あの・・・・」

「何?」

「歩きで・・いいです」

ダメだ。

もう、気の弱い私には

これ以上は・・・

言えない・・・・。


「分かった。歩きか・・・
範囲せめぇな・・・」


そう独り言のように
呟くと
力強く握られた手は離される事なく
歩き始めた。