「…はっ?!?」


兄ちゃんの声に頭が痛む。


ホントは一緒に寝てほしいけど


熱、うつしちゃったら嫌だし。


それは我慢する。


「ねぇ、兄ちゃん…キス、して?」


ゴクリと生唾を飲む兄ちゃんを、虚ろな目で見つめる。


暑い布団の中から出た右手が寒い。


いつの間にか雷と雨は止んでいた。


兄ちゃんは息を吐いたあと、俺と目線が合うようにしゃがんだ。


20cm。


俺の視線は、兄ちゃんの唇にしかいかない。


「卵のお粥作ってくるよ。好きだろ?」


優しく微笑んで、俺の頭をポンポンっと撫でた。


…キスは、されない。


拗ねた顔をする俺を笑ってもう一度撫でた後、兄ちゃんは台所へ行ってしまった。


…なんでだよ…


なんでこんなに寂しいんだろう…?


ベットの近くに座っていた、平たいウサギのぬいぐるみを布団の中へ入れる。


とにかく、何かに隣にいてほしいんだ。


薄れていく意識の中で、床に卵が落ちた音がした。