「…っ」
坂口さんが青アザを見るために近づいた、そのままの距離で上げられた顔は想像以上に近くて、思わずゴクリと息を呑んだ。
「?」
坂口さんは離れるわけでもなく、
どうってことない表情で不思議そうに首を傾げる。
アカンわ…
俺、坂口さんには勝てる気がしぃひん。
「…ねぇ、聞いてる?」
俺は詰まりかけてた息を吐き出すように、
はぁーっとため息をついた。
そして、
掴んでいた手を離して両手を上げる。
「坂口さん…
俺の負けや」
力なく言った言葉に、坂口さんは一層訳が分からないという顔をしていた。
鈍感というか、
無自覚というか…
そんな坂口さんの行動に、
俺はいつも翻弄されてばかりいる。