誰もいない教室に戻ると、今日一日の終わりを告げるような静寂が俺を包み込む。
昼の光もすっかり薄れて、
窓の隙間から入ってくる肌寒い風に
夕暮れの気配を感じた。
目を閉じ、耳を澄ませると
時間を刻む音の中に微かに聞こえてくる生徒たちの掛け声とホイッスルの音。
「…そろそろ行かないと」
今日は来週の試合のための練習試合だ。
練習を始めてるってことは…
またキャプテンに遅いって怒られるな。
日誌を持って教室を出ようとドアのある方に向かう。
でも、
「……」
足を止め、立ち止まる。
そして、外の景色に引き寄せられるようにドアとは反対側の窓際へ向かった。
楽しそうに何かを話しながら歩く二人。
そんな姿が、俺を自然とほころばせる。
窓枠に手を添え、
そこから動けなくなってしまった俺は、
二人の姿が見えなくなるまで
彼女の笑顔を目に焼き付けていたーー