ドレッドを一つに束ねたガードから、右サイドのアキへボールが渡った。


その瞬間に、あれ程五月蠅かったギャラリーの声は形を潜め、コート全体が息を飲むのが分かる。


…来る!


そう感じ取った次の一瞬で、造作もなくアキはディフェンスを躱した。


そのままゴール下に突っ込んで行くも、相手チームのセンターが行く手を遮る。


恐らく、アキに味方が抜かれるだろうと思って待ち構えていたのだろう。


ほぼ同時に飛ぶ二人に、視線の先を合わせる。


ゴールを許すまいと、両手を上げて阻止しようとするセンター。


アキはそのセンターにくるりと背を向け、一度上げたボールを腹の前に戻した。


もう一度ボールを上げた時には、鎖のネットをボールが通り、アキが両手でリングにぶら下がっていた。


見ていたガラスが前後に揺れる。


下を見ると、鉄の拳が悔しそうにドアを打っていた。