今日持ってきていた本は、私が大好きな恋愛小説。

結構有名で、アニメ化したりもしている。



その世界観に引き込まれ、黒髪くんの動きに気づいていなかった。







「ーーーそれ、」

「ぎゃぁぁぁっ!!?」



耳元で呟かれ、自分でも吃驚するような声が出た。



「…ビックリしすぎでしょー(笑)」


突然話しかけてきたのは、黒髪くんだった。


「…そ、ソウデスカネ」

こ、コミュ障の私には無理だ!
もう何処かへ行ってくれ!!!


私の切実な願いも叶わず、

「名前、何ていうの?」

「っこ、紺堂ですっ」



気が付いたら、ちゃっかり私の前の席をキープしてやがる…!


もう知らん、さっきちょっとキュンってしたあれ返せ!
と何か理不尽な怒りを放っていると、

「俺は朝比奈 友樹な。よろしくー」

「よ、ろしく…」


それにしても朝比奈さん、さっきからずっと笑ってるけど…何か楽しいのか?



コミュ障の私なんかと喋ってても何一つ…あれ、泣きたくなってきた。



「ーその本、アニメになってたやつやろ?」


…ん?
何か方言っぽかったような、

「俺、最近引っ越してきたばっかりなんや。変な方言やろ?」

「…いや、ギャップがあっていいと思う…って!!?」



何言ってんだ私っ!!!

慌てて逸らした視線をもう1度上げてみると…バッチリ目が合った。


しかもなんか笑ってる〜〜!!



弄ばれてる気しかしないよ…!



「…、ありがとな」

弾かれたように顔を上げると、朝比奈さんが目を細めて笑っていた。


「べっ…つに褒めたわけじゃありませんから!」

「ふぅ〜ん、そうですか〜。」




私と朝比奈さんの出会いは、こんなところから。