…あ、冨岡君の声だ。
振り向かずとも分かってしまうのは、私が彼の声を覚えているからでは断じてなくて、
ファンの子が一斉に私の方に熱い眼差しを送っているから。
本当に、あの時パーを出した自分が恨めしい。
「なーに?」
私は何を思ったのか、
とっても愛想のいい声と満面の笑みで振り返っていた。
──ちょっと見せつけてあげよっと。
我ながら性格が悪い。
「俺、冨岡。
これから一年間よろしくな。」
そうして向けられた冨岡君の笑顔は眩しすぎた。
ヤバい。
このままじゃ私の性格の黒さがどんどんと打ち消される。
てか、冨岡君のこと知らない人なんていないのに。
わざわざ自己紹介するなんて
この人天然なんだ、
なるほど、これもモテる秘訣か。
…なんて納得しながらも、私は笑顔で「こちらこそ」と答える。