「でもさ、意地悪言っちゃうと先のことはみんな分からないからね。それは楓もね。来週は昔の想い人にも会うことだし、今は会う事に不安を感じているけど会ったら何か感じるかもよ。いろんな意味で山中くんにも衝撃与えてみるのもいいんじゃない?」

「もう何言っているんですか?英輔を想う気持ちはもうないですよ。会っても何も変わりません!」

ビックリしてつい声が大きくなってしまった。
もう!って咲季先輩を睨むと、フフンって笑ってる。

「楓は真っ直ぐに山中くんだけ見つめて周りを見ないからさ。いい男いるよ、例えば・・澤田くん。周りはあんなにキャーキャー言っているのに、楓は何も感じないわけ?同期なのにもったいないよ」

「澤田くんですか?そりゃあ~かっこいいし優しいからみんなが騒ぐの解りますよ。あんなにもてるのに彼女作らないなんてもったいないと言うか、どんな人選ぶか楽しみと言うか」

「じゃあ、同期なんだから楓が近づいてみれば?山中くんも驚くよりも嫉妬するかもよ」

咲季先輩がすごく企んだ顔して笑っている。また良からぬ事を考えているんだ。

「何言っているんですか?そんな事したら澤田くんに引かれて、健吾にはドン引きか驚愕されます。それに万が一、協力するよなんて言われたら私もう立ち上がれませんよ。第一澤田くんには健吾の事好きだってばれているし、頭おかしいって思われます」

「え~そうかなぁ~、どんな結果が出ても悪い事にはならないと思うけどなぁ~」

「ダメです!」

まったく!咲季先輩は時々とんでもない事を言い出す。どうして私が澤田くんに近づくのか意味分からない。
澤田くんが優しい事は最近一緒に飲んだり話したりしたことで知った。
それで私が近づいて健吾に嘘でも澤田くんが気になるなんて言ったら終わりだよ。
今までだって『好きな奴いないのか?』とか『気になる奴いないのか?』って言われてきたんだもの。
協力するって言いかねない。そしたら健吾を好きって事も終わりだ。

私が咲季先輩を睨むと、『まあまあ飲んで、はいはい』って新しく開けた赤ワインを注いできた。
冗談にも程があるよと頬を膨らませて1口飲むと、すごく美味しいワインだった。

「こんなに飲んだら帰れなくなります」

「いいよ~明日服貸すから泊まっていきな。今、ルームウェア持ってくるから着替えてくつろいで」

そう言ってベッドルームに入っていった。せっかくだから甘えちゃおうかな。
話はおかしな方向に行っていて咲季先輩は楽しんでいるみたいだけど、大事な話題には真剣に答えてくれる。
話のペースは完全に持っていかれているけど、やっぱり楽しい時間なんだ。