「それで、山中くんのほうはどうなっているわけ?」
英輔の話題から健吾のことに話題を変えてくる。もちろん私のことを気にかけてのことだ。
「あぁ、健吾ですか・・」
健吾の事になると、私の言葉も鈍くなる。
「最近、山中くんと伊東さんの噂よく聞こえてくるしさ。この前は2人で帰って行くとこも見たけど」
そう、この頃健吾は伊東さんとよく会っている。
社内でも2人は楽しそうに話しているけど、仕事の後も食事に行っているみたい。
それは健吾から直接聞いている。相変わらず私は『よかったね』とか『頑張ってね』とか言ってしまっている。
彼氏の相談がメインみたいで、『決してデートと言えるものじゃない』と健吾は言うけれど・・そんな2人を目撃した人達は『あの2人付き合っているんじゃない?』と噂をたてている。
仕事が終わって伊東さんに会いに行く健吾は、私の目から見ても嬉しそうだけどね。
伊東さんと噂になっている事は健吾本人も知っているみたいだけど、変わらず伊東さんと2人で会っている。
私も周りに2人の事を聞かれるけど、『さあ、知らない』と知らない振りを通している。それしかできないから。
「彼氏とのことで相談にのっているって、健吾は言ってますけど」
「2人で会って社内で噂になっても楓は何もしないの?ただ見ているだけ?」
「ん~、でも・・」
私の言葉でいつも笑顔の咲季先輩の顔が真顔になる。私の顔をジッと見て。
「楓、このままじゃ取られるよ」
咲季先輩のその一言に心臓がギュっとした。
ずっと私が心の中に秘めていた気持ちのままだから。
取られるって言葉は本当は違うのかもしれないけど。健吾は私の物でも彼氏でもないのだから。
でも、咲季先輩が言おうとしていることはちゃんと分かっている。
「2人が会い続けるのは相談だけ?私は伊東さんの事よく知らないけど、うまくいってなくても彼氏がいて
他の男と噂になる位何度も会うのは、その男を狙っているんじゃないかなって私は思うよ」
「話したかぎり伊東さんはそんなタイプに見えないし、一緒に飲んだ時本当に彼氏の事真剣に悩んでいるように思えたけど・・・」
伊東さんに会った時の事を思い出しながら話す私を見て、咲季先輩が苦笑した。
「楓は素直だね。ほとんど人を疑ったりしないし、恋のライバルの味方までするなんて私にはできないな」
「そんなことないです。私の心の中はいつも真っ黒だし、嫌なこと毒づいてます。それを本人に言えないような、嫌な奴なんです。好きな気持ちも伝えず、健吾に応援してるって嘘ばかりつき続けていますから」
違う違うって首を振りながら顔を歪ませていると、しっかりした声で名前を呼ばれた。
「楓、楓」
その声にハッとして顔を上げる。
「毒づいたっていいじゃない。山中くんの恋の応援して自分の気持ち隠し続けて、無理ばかりしてきたんでしょ。そうやって頑張ってきたんでしょう?」
「はい」
その言葉に素直に頷ける。確かにその通りだから。
「ただ私が言いたいのはね、今の状況聞いていると山中くんと伊東さんは付き合わないにしても、微妙な関係になって楓が諦める状況になっていくかもしれないよってこと。彼氏がいてもそうゆう関係の男をキープできる女っているんだよ。狙ってなくても、自然にできちゃう人もいるんだから厄介なのはそっち。伊東さんがそうなのかは分からないけどね」
「でも今健吾も頑張っているから。伊東さんを想っていつも美好で愚痴っていた健吾を見てきたし。人を好きでいる気持ちは私にも解るから、今私には何も出来ないんです。でも、咲季先輩が言っている意味も理解できます」
「そっか・・・うん、そうだよね。楓は口には出さないけど、いろんな事ちゃんと考えているものね。ただ私はさ、5年間も想い続けている楓の味方だし、楓に幸せになって欲しいのよ。それにお節介だけどさ、今山中くんを止めないとダメかな?ってちょっと思ったからさ、本当にごめんね。まあ、姉心と思って」
咲季先輩の言いたい事はちゃんと伝わってきた。
今まで健吾との事を相談してきて私の気持ちをちゃんと理解してくれているから言ってくれているってこと。
確かにこのままにしていたら、どんな形にしても伊東さんに健吾を取られてしまうのかもしれない。
頭では解っているのだけどね・・・
英輔の話題から健吾のことに話題を変えてくる。もちろん私のことを気にかけてのことだ。
「あぁ、健吾ですか・・」
健吾の事になると、私の言葉も鈍くなる。
「最近、山中くんと伊東さんの噂よく聞こえてくるしさ。この前は2人で帰って行くとこも見たけど」
そう、この頃健吾は伊東さんとよく会っている。
社内でも2人は楽しそうに話しているけど、仕事の後も食事に行っているみたい。
それは健吾から直接聞いている。相変わらず私は『よかったね』とか『頑張ってね』とか言ってしまっている。
彼氏の相談がメインみたいで、『決してデートと言えるものじゃない』と健吾は言うけれど・・そんな2人を目撃した人達は『あの2人付き合っているんじゃない?』と噂をたてている。
仕事が終わって伊東さんに会いに行く健吾は、私の目から見ても嬉しそうだけどね。
伊東さんと噂になっている事は健吾本人も知っているみたいだけど、変わらず伊東さんと2人で会っている。
私も周りに2人の事を聞かれるけど、『さあ、知らない』と知らない振りを通している。それしかできないから。
「彼氏とのことで相談にのっているって、健吾は言ってますけど」
「2人で会って社内で噂になっても楓は何もしないの?ただ見ているだけ?」
「ん~、でも・・」
私の言葉でいつも笑顔の咲季先輩の顔が真顔になる。私の顔をジッと見て。
「楓、このままじゃ取られるよ」
咲季先輩のその一言に心臓がギュっとした。
ずっと私が心の中に秘めていた気持ちのままだから。
取られるって言葉は本当は違うのかもしれないけど。健吾は私の物でも彼氏でもないのだから。
でも、咲季先輩が言おうとしていることはちゃんと分かっている。
「2人が会い続けるのは相談だけ?私は伊東さんの事よく知らないけど、うまくいってなくても彼氏がいて
他の男と噂になる位何度も会うのは、その男を狙っているんじゃないかなって私は思うよ」
「話したかぎり伊東さんはそんなタイプに見えないし、一緒に飲んだ時本当に彼氏の事真剣に悩んでいるように思えたけど・・・」
伊東さんに会った時の事を思い出しながら話す私を見て、咲季先輩が苦笑した。
「楓は素直だね。ほとんど人を疑ったりしないし、恋のライバルの味方までするなんて私にはできないな」
「そんなことないです。私の心の中はいつも真っ黒だし、嫌なこと毒づいてます。それを本人に言えないような、嫌な奴なんです。好きな気持ちも伝えず、健吾に応援してるって嘘ばかりつき続けていますから」
違う違うって首を振りながら顔を歪ませていると、しっかりした声で名前を呼ばれた。
「楓、楓」
その声にハッとして顔を上げる。
「毒づいたっていいじゃない。山中くんの恋の応援して自分の気持ち隠し続けて、無理ばかりしてきたんでしょ。そうやって頑張ってきたんでしょう?」
「はい」
その言葉に素直に頷ける。確かにその通りだから。
「ただ私が言いたいのはね、今の状況聞いていると山中くんと伊東さんは付き合わないにしても、微妙な関係になって楓が諦める状況になっていくかもしれないよってこと。彼氏がいてもそうゆう関係の男をキープできる女っているんだよ。狙ってなくても、自然にできちゃう人もいるんだから厄介なのはそっち。伊東さんがそうなのかは分からないけどね」
「でも今健吾も頑張っているから。伊東さんを想っていつも美好で愚痴っていた健吾を見てきたし。人を好きでいる気持ちは私にも解るから、今私には何も出来ないんです。でも、咲季先輩が言っている意味も理解できます」
「そっか・・・うん、そうだよね。楓は口には出さないけど、いろんな事ちゃんと考えているものね。ただ私はさ、5年間も想い続けている楓の味方だし、楓に幸せになって欲しいのよ。それにお節介だけどさ、今山中くんを止めないとダメかな?ってちょっと思ったからさ、本当にごめんね。まあ、姉心と思って」
咲季先輩の言いたい事はちゃんと伝わってきた。
今まで健吾との事を相談してきて私の気持ちをちゃんと理解してくれているから言ってくれているってこと。
確かにこのままにしていたら、どんな形にしても伊東さんに健吾を取られてしまうのかもしれない。
頭では解っているのだけどね・・・