「ありがとうございます。すごく嬉しいです」

健吾の顔をまっすぐに見て微笑んだ伊東さんを見て、自分の中に真っ黒で渦巻いている嫉妬心に潰されそうになった。

もう嫌だよ・・・この2人を目の前で見ていたくない。帰りたい、帰りたい・・・カンパリソーダを一気に飲み干しながら、その気持ちも飲み込んだ。


「健吾と話すようになったのは仕事で?」

澤田くんが突然方向の違う質問をした。

「あ・・いえ、会社ではほとんど話したことなかったのですけど、うちの総務課と営業部の方との飲み会に参加した時からちょっとずつお話させて頂きました」

「ああ、そうなんだ」

「確か、澤田さんは参加されていなかったですよね」

「うん、行ってないね。飲み会はほとんど参加していないからね」

澤田くんの言葉に伊東さんは、うんうんと顔をたてに振りながら聞いている。
健吾もとりあえず2人の話を聞いているみたいだ。

「その飲み会も彼氏に行くことは伝えなかったの?」

澤田くんが聞くと、伊東さんは『はい、急に人数が足りなくなって呼ばれたので彼には言ってなかったです』と答えた。

健吾もそれは知らなかったみたいで真剣に聞いている。

「飲み会っていうか、合コンは参加していないの?」

「はい、そういう場はほとんど参加していません。彼氏がいるので参加するのもちょっと・・・だし、少し前から彼の束縛も結構きつくなっていたので・・。あと、山中さんと友達交えてお食事に行く時も伝えませんでした。食事って言っても信じてもらえないし」

「前は束縛はされなかったの?」

私も気になって聞いてみた。

「はい、前はなかったです。職場の歓送迎会とか女子会とか言っても疑わなかったのに、今は全部疑われちゃって。それで喧嘩みたいになってしまうんです」

「そっかぁ、それじゃあ友達と会うのも疑われて嫌だよね」

つい、伊東さんの気持ちに同意してしまった。でも、確かに毎回疑われたら嫌だよね。
うん・・そうだなって思ったとこで澤田くんがまた口を開いた。
今までの澤田くんのイメージと違うって感じる程、今日の澤田くんは会話に参加している。

「前はなかったのに、それだけ疑われるってことは何か見られたり知られて彼が疑いを持ったってことはないのかな?」

「何かを見られたり、知られたりですか・・・」

伊東さんが考え込んだ。思い当たるふしがあるのかな?

「う~ん、分からないです。でも、携帯を見たりする人ではないと思うし、私もやましい事はしていないつもりです」

健吾と会ったり話したりしていることは彼女にとって何なのだろう?
彼女が悪いわけじゃないかもしれないけど、健吾の気持ちは?彼氏にナイショで健吾に会っている事に少しはやましさを持って欲しい。

あ~本当にだめだ。私にはアドバイスも何もできない。ごめんね、あとは澤田くんにお任せしちゃいます。