再び目を覚ました時には、カーテンの隙間から明るい日差しが射していた。
変わらず隣にいる健吾にそっと顔を寄せると、健吾が私の肩を抱き寄せた。

「おはよう」

「おはよ」

あたり前の挨拶だけど、すごく新鮮で気恥ずかしい。
こんなそばで、密着して『おはよう』なんて何か・・複雑。

「どうした?」

私の気持ちを察知して健吾が私の瞳を探ってくる。

「うん?う~ん何か言い表せない気持ち。こうして健吾がそばにいてくれることとか」

「それは俺も同じだよ。でも何より楓を離したくないって気持ちが強いかな?」

「本当?」

「うん」

少しはにかみながら答えてくれる健吾の顔がたまらなく愛しくて、ぎゅっと健吾を抱きしめた。
それに答えてくれるように抱きしめ返してくれる。こんなに満たされてもいいのだろうか?ずっと隠してきた想いが溢れ出るかのように、抱きついた私の身体は健吾から離れることができない。
そんな私をしっかりと受け止め続けてくれた。

だからついわがままな言葉まで出てしまう。

「ずっと健吾のそばにいたい」

そんな私の言葉を聞いて、健吾は私の顔をじっと見た。

「あたり前」

予想外の返事に驚いた。

「何それ?」

私が驚きの顔を見せると、健吾は面白そうに笑って見せた。その笑顔を見て、つい私も笑ってしまう。
結局私達ってこんな感じなのかもしれない。
恋人だけど・・友達。
でも今はそんな友達らしい感じも嫌じゃない。それはやっぱり健吾の【愛情】を感じることができたからかな。
それは健吾が見せてくれる眼差しが、しっかりと私に伝え、感じさせてくれた。

「こうしてそばにいるって、やっぱりいいな」

「ん?何が?」

「楓が俺のそばにいる。それがすごく心地いい」

そんな風に言ってもらえるなんて思っていなかったから、嬉しさが込み上げてくる。

「私だって・・幸せ」

そう答えると、健吾は急に頭をフルフルと振った。

「あ~、俺もバカだよな。もっと早く気がついていればよかったのに」

「え?」

「楓が会社辞めるって決める前に、ちゃんとしておけばってさ。こうして今そばにいるけど、職場離れてやっぱり楓のこと気になるしさ」

「私?」

「・・・いや・・あいつかな」

言い難そうに言葉切れながらつぶやいた。

「あいつって・・・え?英輔?」

「・・・」

答えないけど、健吾が気になっているのはやっぱり英輔のことだ。
確かに昔好きだったけど過去の話で、ちゃんと話したんだけどな。英輔と同じ職場にいても、今更気持ちがぶれることはない。

「英輔はそんなんじゃないよ、本当に。健吾への気持ちと英輔とは全く違うし、絶対ないから心配させるようなこと。健吾、信じて」

「うん、ちゃんと分かっている」

「そういう気持ち・・私だって同じだよ」

そう・・私だってまだ不安は抱えている。健吾がそばにいてくれて『好き』って言ってくれて幸せを感じても、不安の種はまだある。
私の言葉に健吾は、意味を探るように私の顔を見た。