なのに・・・しばらくして遠距離の彼女と別れちゃった。


彼女は他の人を好きになって健吾は・・・ふられた。


落ち込んだ健吾のそばにいる時間が増えて、今私達の行きつけの美好に通い始めたのもその頃で、浴びるように飲む健吾に付き合い、よく2人で二日酔いになった。
休日は海に山にドライブ・映画にコンサート・どちらかが行きたい!と言えばどこでも行った。
美好ではなく家で飲むといえば、レンタルしたDVDを見たり・テレビを見ながら遅くまで飲んで、そのままお互いのアパートにも泊まった。
普通ここまですればデートなのだけど、私達は友情という関係をただ楽しんでいたんだ。

私は健吾のそばにいたくて、健吾の笑顔が見たくて。


そして彼に笑顔が戻った頃には、私達は完全なる親友になっていた。
恋や愛を感じ合える男と女になれる空気はどこにも存在しなくて、時だけが過ぎてしまった。


   -そして半年前、健吾は伊東さんと出会っちゃったんだー


「楓、昨日の飲み会で気になる子がいたんだ」

そう言われて心臓がキュッとなった。

初めて健吾に彼女がいると知ったあの時よりも、もっともっと現実的に衝撃がきて、健吾が目の前にいるのに存在を感じられなかった。
彼女がいると知ったあの感覚がフラッシュバックする。


   -また健吾が遠くなるー


絶望感に飲み込まれそうになって、必死に笑顔を作る。
そんな私に健吾は気付かない。恋をしている目をしているから。

「でも彼氏がいるらしくて、諦めなきゃだめかな?」

そんな言葉をいいながら、諦められない顔をしている目の前の健吾に言葉が浮かんでこなくて、

「頑張りなよ」

結局何の感情もない顔で言ってしまったんだ。
それからは彼氏のいる人に恋をして悩む健吾にまた相談されて、アドバイス・応援。


嘘の言葉・嘘の笑顔・嘘・嘘・嘘。


本当の私なんてどこにもいない。
もう幸せの掴み方なんてわからないよ・・わからない。

「あ~もう嫌!」

湯船のお湯でバシャバシャと顔を洗うと、いい加減長い時間湯に浸かっていたことに気付き、急いで湯船からあがった。