「何で・・そう思ったの?」

「楓はずっと我慢していたみたいだから。俺と一緒にいることを今まで負担に思っていたみたいだし。そうゆうこと全然気付かずに、あいつに嫌な思いさせたみたいだから」

「本当にそんな風に思っている?」

「思ってますよ。ちゃんとあいつの言葉で聞きましたから、もう限界だって。それに転職のことだって・・・俺知りませんでした。相談どころか朝礼で知らされる位の存在だったんですよ」

健吾の言葉を聞いて胸が痛くなった。
楓の想いは何も伝わっていないから。彼女の想いはもっともっと深い愛情を潜ませていたのに。そんな状況を勘違いさせたまま終わりになんかさせたくないと思った。

「そんなんじゃないよ!本気でそう思っている?」

「そうなんじゃないですか?俺はたとえ楓が会社を辞めてもこれで終わりじゃないって思っていたけど、あいつは電話かけてもメール送っても一切連絡を取ろうとしない。それは俺を切ろうとしてるってことじゃないですか」

「山中くんはそれで終わりなの?山中くんにとって楓はその程度で切れてしまう存在なの?」

「・・・」

健吾は咲季の質問に言葉を返さない。
一番大切な所で答えを聞けず、咲季は健吾に鋭い視線を向けた。

「電話かけてもメール送ってもだめならさ、家でも会社でも会いに行けばいいじゃない!そこまでして嫌われるのが怖いの?山中くんが楓のこと切りたくないならまず行動しなさいよ」

きつい言葉を言ってしまっているけど、本当はそこには咲季の応援する気持ちが含まれていた。

「でも俺・・あいつにもう限界って言われているんですよ」

その言葉に健吾の今の気持ちの弱さの原因を感じることができた。
その気持ちを取り払う為に咲季は真実を伝えるべきだと思った。