「すぐ来るって。とりあえず行こうか」

エレベーターで降りて、会社前で数分待って到着したタクシーに乗り、咲季先輩の誘導でお店に向かった。
以前咲季先輩と飲みに行ったお店の方向だということは分かった。

お店に着いて店内に入り、少し照明の落ち着いたゆったりした雰囲気に心も和んだ。
今はあまりワイワイしたお店よりも、しっとりした場所を求めている。
店員さんに個室に案内され、咲季先輩と並んで座り、向かいの席に澤田くんが座った。
ビールとそれそれ好みの料理を注文し、まずはビールで乾杯し次々に運ばれた料理を食べながら他愛無い話で盛り上がった。
こんな感じ最近なかった気がする。
それと共に会社から離れたこのお店を咲季先輩が選んで連れて来たことの意味を少し感じ取っていた。
前にもこんな事があったからだ。
でも今日は澤田くんが一緒だということで、【違うのかな?】と思ったりもしたけど、料理をある程度食べ終わり何杯目かのドリンクが運ばれた後、咲季先輩がいつもよりワントーン落とした声で尋ねてきた。

「それで?最近何があったわけ?」

突然の切り出しに一瞬慌てる。

「えっ?」

思わず咲季先輩に顔を向けると咲季先輩もこっちを見ていて、『ん?』って少し首を傾けて微笑んでいる。

「最近2人の様子おかしいでしょ。全くって程話してないし、空気が明らかに違うでしょ。いくらなんでも気付くわよ」

「・・・」

「何があった?」

咲季先輩の優しい声に戸惑いながら思わず前を見ると、優しい笑顔で澤田くんが私を見ている。

今まで咲季先輩と澤田くんには別々に相談してきたけど、今こうして2人が一緒に私の表情を伺いながら確認してきたことを見ると、何となく状況が判断できる。
でもそれは少しも嫌な感じに思わなかった。
2人共いつも優しく不安定に悩む私を受け止めてきてくれたから。
だからこうして仕事の後、一緒に気遣ってくれたことに嬉しく思えたから素直に今の状況を話すことができる。