「・・・山中さんからですか?」

「うん。この場で私が正直に言っても、彼氏には私が伊東さんをかばっているとしか思えないんじゃないかな?私ならそう思うよ。彼氏に信じてもらいたいなら、一緒にいた相手から違うと言ってもらうしかないと思うよ。会社の同僚であって勘違いされる仲じゃないって」

少し俯いて考えている伊東さんは、きっと色々と考えているのだろう。
私は自分の言葉で自分が嫌いになる。
健吾の気持ちを私は全然考えてない。健吾のことを守っていない。
私が一言『2人きりで会う予定じゃなく、私も誘われていた』と伝えればいいのかもしれないのに、伊東さんと彼氏の前に健吾を出そうとしている。
健吾が発する言葉で、健吾をどれだけ傷つけてしまうか分かっているのに。

それでも私は言ってしまう。

「健吾呼ぼうか?」

バッグからスマートフォンを出して、伊東さんに見せる。

「・・はい、お願いします。でもあの、柚原さんも一緒にいてもらえませんか?」

また彼女のお願いに小さなため息をつき、

「何で私まで?」

そんな場に私まで巻き込もうとしている彼女に、疑問と呆れる気持ちの混ざった言葉が出る。

「3人だと冷静に話せないような気がして、私・・」

曖昧な付き合いをした結果なんじゃないかと、つい冷めた目で伊東さんを見てしまったが見捨てることもできずため息をついて視線を落とす。

「わかった」

それだけ告げて、健吾に電話をかけた。