「じゃあ、またね」


『…うん』



ちゅ、と触れるだけのキスをして別々の道を進んだ



颯太は昨日が卒業式だった為打ち上げにそのまま途中参加するらしい



前日の夜から始まっていただろう、なのに何故私との時間を選んだのか


1か月だから?





首に触れると少し痛みが走った




行く場所なんて自分の家しかない



疲れたな、なんて思いながら鍵穴の鍵を通した


慣れた手つきで家のドアを開け――





「…胡桃……ちゃん」



ると、愛しい彼がいた




『ッ…修平、さん』



ドサッと音を立ててバックが落ちた



そんなのはどうでもいい




玄関で靴を履く修平さんは、これから帰ろうとしていたのか、それとも家の中に入ろうとしていたのか、それは分からない




『ッ』


目頭に涙がたまってハッとしてバレないようにこすった




…1ヶ月ぶりですね


元気でしたか?


今日久しぶりに修平さんを思い出してどうしようもないくらい愛しくなっちゃったんです。



たまらないくらい好きだって思い知っちゃったんです





直接会っちゃうなんて、そんなの、反則…だよ




「…なんで、泣くの」



『ッ』




「いつもそうやって泣いてばっ――「あれ!胡桃お帰り!」」



自分の部屋から思い切り出てきた彩海は私を見るとすぐに笑顔になった





『た、ただいま』


落ちたバックをすぐに拾って靴を脱いだ




「んー、久しぶりに3人でご飯食べよ!」


彩海はニコニコと笑ってリビングに向かった





『確かに、彩海とちゃんと会話したの1ヶ月ぶりかも』


クスッと笑うと、


「「ッ…」」



少し、空気が重くなった気がした





『…え、』



「ううううんん!なんでもない!」

ハハッと乾いた笑いを零してリビングのドアを閉めた




…あ、そうなんだ。

あの夜中に何処か行ってしまうのって



修平さんに会いに行ってた訳じゃなかったんだ




浮気相手の人と、まだ終わった訳ではなかったんだ






「そーゆーことね」


『修平さん、』



キッとリビングを睨みつける彼に何も言えなくなった




そして彼は私に耳元に顔を近づけた





それに黙って、私は頷いた