少し、正気に戻る
こんなに独占されて気持ち悪くはないのだろうか?
少し前の、1か月前の冷めた私ならすぐ口を開くだろう
重すぎる、って
シャンプーのポンプを2プッシュ程出して髪をゴシゴシと洗う
『―ッ』
目を閉じると、彼が出てくる
≪――胡桃≫
優しく私を抱きしめてくれる
≪愛してる、何処にも行くな≫
ぎゅ、と強く…
ゴシゴシと洗う手を止めた
なんで、今更出てきたのだろう?
訳が分からなくて急いで髪を洗い流した
こんな事考えてしまう自分のほうが、颯太の愛よりも何倍も気持ち悪い気がしてならなかった。
それと同時に最後に会った武の事も考えた
…武も、元気かな
あれから私は連絡先を一切変えたわけでもない
電話番号も、メールアドレスも一切変えていない
だけど――、
武からの連絡も修平さんからの連絡も一切来なかった