彼を止めようと思ったけど
「おはよ!」なんて叫びながら友達の元へと行ってしまいもう視界に彼はいない
とりあえず学校へ行こう
歩いたのもつかの間
「――胡桃!さっきの何?」
背後から声がして、それを無視して歩き出した
「待ってよ!無視はひどくない?」
なんていいながら隣を歩く彼女をチラリと見た
また、染めたのかな?
綺麗なミルクティ色の髪は胸元まで伸びているけど、重みを感じず派手な印象ではない
彼女――
『ごめんね、おはよ』
坂井彩(サカイアヤ)は高校で数少ない友達の1人
「おはよ!また染めたのーっ」
見てみて、なんて見せる彼女の髪の毛を触ると、サラサラで指からすぐかすれてしまった
『連絡先聞けたの?』
「実はまだ…でもね!指に指輪つけてて…彼女さんですか?って聞いたら違うって言ってくれて、嬉しくて連絡先きくの忘れちゃったー」
彩は美容師に絶賛片思い中だ
好きすぎて、バイト代が出ては店に行き、カットやカラーをしてもらっている。
…時々、トリートメントだけしに行くときもある
『よかったね』
なんて笑いかけると彩はハッと思い出したように
「さっきの人彼氏?ねえ!何?」
私を差し置いて、なんて怒り始めた
彩のぽってりとした唇がぷうと膨れる
『彼氏…だよ、一応』
「そうなんだ!あんなキスしちゃってさ!
胡桃超可愛い!」
ぎゅ、と腕をからめてくる彩の頭を撫でた
彩は高校3年生にも関わらず身長は150センチで小柄だ
162センチの私はそんな彩をいつも見下ろす
彩…睫長いなあ…