「――おはよ!胡桃!」
『…おはよ』
朝から騒がしいな、なんて思いながら隣を見る
金髪の髪の毛を遊ばせて、着崩した制服に水色のカーディガンを着てる、私の"彼氏"
「もうすぐ卒業式だよー…あーあ、まだ高校生やってたい!」
ぶぅ、と口を膨らませる颯太は可愛い
『私はあと1年高校生するからな』
「あ、4年制なんだ?じゃあ俺が先に卒業して金貯めて同棲だな?」
――同棲、か
付き合ったのは昨日なのに、近いようで遠い未来の話をどうするんだ、なんて思ってしまう私は夢なんてないのかもしれない
「…やなの?」
『あ!ううううん…。楽しみにしてるね』
「よっしゃ!」
ぎゅ、と更に強く繋がれた手に、ぎゅ、と私も強く握り返した
自然と繋がれた、手
「じゃあ俺の高校コッチだから、バイバイ!」
『ん、バイバイ』
あっさりも離れてしまった手に、もどかしく思ってしまった
颯太があそこの角を曲がるまでここにいよう、なんて思ったら
「忘れ物」
彼はハッとした顔でこちらに戻ってきて
『…え?忘れも――』
忘れ物?
――ちゅ、と触れるだけのキス
キスの忘れ物、なんていう彼に自分が恥ずかしくなってカアアアと赤くなってしまった
「胡桃のこうゆうとこ、可愛い。好き」
『ッ』
「じゃあバイバイ。放課後ね?」
『うん。バイバイ』
なんて手を振って、我に返った
――放課後?
放課後に、約束なんて、してたのだろうか?