「 あ… 宮岡先輩、恥ずかしいですっ」

ふぅん、可愛い事言うじゃん。

「 美月ちゃん、郁斗って呼んでいいよ。特別 」

「 特別? あの、特別って… どういう意味の?」

言いながら顔が赤いじゃん?なんだよ、この子、可愛いからいじめたくなるな。

あの必死で待って!と駆け上がって来きた美月に、俺はたぶん一目惚れしたんだ。

髪を結んでいたシュシュを取った時の顔も好きだ。

このキレイな髪を誰にも触れさせたくないと思った。
美月は俺を知っていて、彼女がいない事も知っているはず。

俺は美月から視線を外せない。

自販機でジュースを買い並んで飲む。
缶のプルトップを開けて渡すと、ありがとうと笑みを見せながら美月が飲むのはミルクティ、ほのかに甘い匂いが鼻をくすぐる。

なんでもない仕草まで可愛いと思う俺は勝手に重症になっている。

「 あのさ美月ちゃん、俺と… 付き合ってくれない?」

美月の顔を覗き込むように近づけて言った。
もちろん俺の心臓は爆発しそうだったが当たり前に隠して、見つめて返事を待つ。

照れてミルクティを左右に回すようにしてボソッと美月が はい。言うが聞こえない。
いや、わざと聞こえないフリしたんだ。

「 美月ちゃん、もう一回言って?俺を見て、言って」

美月の視線がチラッチラッと揺れながら俺を見る。

まさにキスの距離だ。

だが俺は軽い男じゃないと知ってもらいたい。

「 私、郁斗くんが… ずっと好きでした!だから、よろしくお願いしますっ」

お?おぉ~ マジかっ!?ってかマジか?
だから俺の事知ってたのか…
やっぱ可愛いじゃん。

だから いじめてやりたい。

「 じゃあ、もう一回言ってみて 」

あ、真っ赤。ぷっ… 可愛いだろ~

「 好き… 」

あかん!やられた…

思えばすでにやられている。
美月のあのまっすぐな、必死な姿に。

俺の前に立って つかまえたっ!って俺に言った美月。

俺はもうとっくに、美月に惚れてたんだな。

君から視線を反らせなかったんだから。

君が、好きだ… 美月。


―――――***完***――――――