きっとさっきぶつかった時に落としたんだと気づいた。

制服を着ている彼女は、ニッコリ笑みを見せているが、俺はお礼を言おうとして ふと何かひっかかり、ハッとした。

「 あのさ、なんで俺のってわかったの?これ定期だし… 」

瞬間 かぁっと赤くなる彼女に、俺の心臓が跳ねてドキドキうるさくなる。

なんだよ、これ…

おかしいと思わない奴はいないと思う。
待ってと必死に駆け上がってくる彼女は、今思えば俺を見て、確かめながら俺に向かって来ていたんだと確信した。

つまり、定期にある名前だけで顔がわかっていたから追いかけて来られたんだ。

彼女は俺を知っている。
間違いない。

でも、俺は彼女を知らない。

「 良かったね、定期。あの、私 後輩なんです。一年の朝賀 美月って言います。だから知ってるの 」

後輩… こんな可愛い子いたっけ?
しかも必死で追いかけてきたし…

「 美月ちゃんね、定期ありがとな。喉乾いたろ、お礼に奢るから、来て!」

俺は美月の手を掴んで歩く。

「 あの、先輩お礼なんて… 」

「 いいから甘えれば?あ、彼氏… いるとか?」

ついでに聞いてしまった。

首を左右に振り、いない事を俺に伝える美月が可愛くて、繋いだ手を引き寄せた。