まるで家族の一員みたいに悠斗の両親と会話する葵。
そこに差を感じてしまって、辛くなる。
勝てるはずもないのは分かりきっているのに…
それが、あたしが悠斗の家に行かない理由。
「んー、でも結構買い込んじゃったし。今回はいいや」
最もらしい言い訳を、ない頭で考える。
「あー、確かに。じゃあまた今度な?」
「うん、今度ね!」
良かった、どうにかこの場は納められたみたい。
悠斗が葵を好きだと知った今、『今度』が来ることはないかもしれない。
あるとすれば、あたしが悠斗を友達と思えた時…かな?
二人でスーパーを出ると、何も言わずにあたしが持っている袋を持っていく。
「えっ、袋…」
「あ? お前ん家、俺の家の途中だし。運んでやるよ」
「あ、ありがとう」
「…おぅ」
少し後ろを歩くあたしからは、悠斗の耳が少し赤くなっているのが分かる。
そういう、ぶっきらぼうな優しさが好きなんだよなぁ。
でも、忘れないとダメだ。
夜道を肩を並べて歩く中、自分の中で嬉しい気持ちと悲しい気持ちが同時に押し寄せてきて……
その圧迫感に、押し潰されそうになった。