教会騎士団長サジは休むセブンを見つけるやいなや駆け寄り、

 膝を折り頭を下げた。


サジ
「その剣は希望の剣、あなたの使った魔法は龍が扱う魔法とお見受けする。


 なれば、フォロフォロ様からその剣を受け取った事も誠でしょう」


セブン
「ええ、どうしました?」

 
 サジの態度が急に変わったのでセブンは不思議に思った。


サジ
「その剣は女神フィナレ様が遣わされた聖なる剣。

 正義王が没した頃より、見識高き龍に渡されたと」


セブン
「それがフォロフォロ様?」

サジ
「その通り、そして正義王は聖龍フォロフォロ様に言われたのです。

 
 世が荒廃し、戦乱となればこの剣を心正しく強き者に託せと」

セブン
「僕はただ、魔力のお礼にと渡されただけです」


サジ
「いや、その剣はそんなに安い物ではありません。

 そして私は見た。

 
 死の淵に立った我々を救う女神の光を…

 
 それを握っていた貴方を、貴方の強さを!」


 サジの後ろにはいつの間にか教会騎士団が集まっていた。


サジ
「我らはこれより、選ばれし聖騎士セブン様の守護騎士となる事をお許し下さい。

 いかなる命にも応じます。

 ご命令を!」


セブン
「大袈裟ですね。

 でも今は何より貴方達の力が必要だ。

 我々が回復するまで他の軍団同様、守備に着いて頂けますか?」


サジ
「光栄です。

 承知しました。ゆくぞ!」

セブン
「みんなと仲良くね、勿論ジェノスとも」

サジ「…ご命令とあらば」
 梯子を抱えた煌皇兵が橋を渡って来るのが見えた。


 足場が少ないので一度に攻められる数は決まっている。


 その為、三日月城塞側は非常に守り易い形となっていたが、如何せん数の差が大きかった。

 
 先程の戦闘での被害数。

 
 華國側死者四十名。負傷者五十名。

 
 生活支援だけをしていた者を抜き、まともに戦えるのは兵士数は八百名程であった。


 対する煌皇軍死者三千名、負傷者五百名であった。


 死傷者だけで数えれば百倍の戦功であったが、以前として兵力差は大きかった。


 しかし、ここでも華國軍は善戦を行うのであった。


 義勇軍の勇者エイブルスはことごとく梯子を砕き周り、逆人と城壁での一騎討ちを制した。


 片手で巨剣を振るうその様に敵は恐れをなした。


 傭兵団達は流石は歴戦の戦士であり、煌皇軍を圧倒した。


 中でもジェノスは短剣を二刀使っていた為、セブンと勘違いされ狙われるが全て返り討ちにする。


 この時、顔の右に深い傷を受けるが、サジの祈り、フィナレの力により戦線に復帰する。


 そのサジ率いる教会騎士団の実力は今まで知られていなかったが、

 ここで真価を発揮する。

 
 彼らが祈りと呼ぶ神聖魔法は傷ついた兵を回復させ、

 その剣の腕も確かな物であった。

 
 ボルト亡命軍は必死の抵抗を見せる。

 女戦士であったスピアは腹部に矢を受けても尚、奮戦を見せる。

 
 スピアを庇うように周りの戦士は猛然と迫る敵を城壁の外へと落とし続けた。


 全ての兵士が一丸となり日が暮れ始める。

 
 ここまで抵抗出来たのはセブン達の存在があったからであろう。

 彼等が戻って来れば敵は再度、引く。

 
 そしてここで、セブン達は前線に復帰する。

 
 魔力は回復していなかったが彼等は強かった。

 
 セブンとウルブスは文句無しに強く、カトリ、ピエロもまたそれに続いた。

 
 クロネは自分が生み出した武器の威力に自身も驚く程であった。

 
 戦闘開始より九時間。

 
 その間戦い続けであった両軍に明らかに疲れの色が見える。

 
 日が落ちるとその兵力差に華國軍は打ちのめされた。

 
 かがり火の数が未だに迫り来るであろう敵の数を物語っていたのだ。

 
 セブンは悔しかったが、総員退却の合図を出す。

 
 セブンは全ての魔力を使い切り、土魔法で橋を落とし、退却を開始する。


 しかし、セブン以上に悔しがっていたのはボーワイルドであった。


 たった千程度の兵に足を止められ、兵力を削られ、橋を落とされた。


 秘宝を奪われ、大した戦果も得られなかったボーワイルドは怒りに震える。

 
 これ程までの惨敗は軍に入ってからも味わった事が無かった。

 
 谷を渡るのに時間が掛かるであろう事、魔力を回復されるであろう事を考えると進軍は難しくなったのである。

 

 

 
 
 橋を落とした時点でセブンは気を失いその場に倒れる。


 ウルブス、カトリがそれに気づき必死DE運び出した。


 エイブルスは城壁を飛び下り大剣を振り回し、敵を薙ぎ倒し始めた。


 それに続けとジェノス、教会騎士団が正門を開き突撃を開始。

 
 三日月城塞前の広場は制圧され、橋を落とされ逃げ場を失った煌皇兵は武器を捨てる。


 スピアはくたくたになったサジに治療を受けていた。

 
 1日中戦い続けた両軍の戦闘は終結したのだった。

 
 華國軍は撤退。

 
 最終被害は死者四百名、負傷者百名。

 開戦当初より半数を失ったのである。

 
 しかし、煌皇軍の被害はそれを遥かに上回っていた。

 
 死者四千名。負傷者千名。

 
 たった1日で華國西軍は自軍被害の十倍近い敵を葬ったのである。

 
 中でも逆人の被害は多く魔法都市よりここまででその数を三分の一も失ったのである。


 関所こそ押さえたが、ボーワイルドの大敗であった。


 これにより、西、東共に華國軍の実質的勝利と見る事も出来るが、

 未だにその兵力差は大きかった。


 東では拮抗していたが、西は奇跡的に全滅を免れただけであり、それも時間の問題であった。


 ボーワイルドはこの時、いち早くフェネックを退却させ別行動を命じた。


 フェネック率いる未だに活躍の場が無い騎馬軍五千。

 
 ボーワイルドが乗ってきた船に乗り込み、北へと出向。

 
 セブン達の退路を絶つべく背後へと回り込もうとしていたのである。
 
 

 
 烈風のフェネックは異名通り、退却と同日に船に乗り込み、出港する。

 
 海を渡り、山脈を超え華國領土に侵入した。

 
 関所に全兵力を割かなかった華國軍は西にも民間兵を多く配備していた。

 
 守りの硬い要塞の多い西側は鉄壁の海岸と呼ばれる程であった。

 
 しかしフェネックはこれらを全て無視し、山脈関所へと進撃する。

 
 民間兵達が騎馬五千を見た時の驚きは大きかった。


 補給も何も受けず、騎馬での進撃は早い。

 
 民間兵がこれを追い要塞から十分離れた所でフェネックは転身、撃破。


 自軍の死体も負傷兵もその場に置き去りにしてまで軍を進めた。


 フェネックがボーワイルドより受けた指令はただ一つ。


 船を捨てても構わない、華國王都へ要塞兵が集結しようが構わない。


 ただ一つ。

 関所にいた兵の全滅。


 数よりも、船を失うよりも彼等が王都で守りに入る事の方がボーワイルドにとって脅威だったのである。


 関所を征したボーワイルドは谷間の南に急ぎ高台を設置させた。


 流石に大軍だけあり、その作業は直ぐに完了する。

 
 北側華國側へ生き残った魔法使いが氷の橋を掛け、

 向こう岸に兵を送り南より伸ばしたロープを固定させる。

 
 これが煌皇軍が考えた作戦の一つであった。

 
 深い谷間に幾つものロープが掛けられ、ゴンドラが兵と物資を渡した。


 ボーワイルドの的確な指示でその作業速度はフェネックに負けぬ早さであった。


 これらにより、負傷兵を含む国境守備兵二千、フェネックの五千を除いた煌皇軍九千は華國領土へと侵攻に成功する。


 この時、華國王都までの防衛線は3つ。

 
 兵力はセブンの率いる連合部隊で負傷者、武器の扱えない者、女性、老人を除くと実質的に戦力となる者は四百。


 王都守備兵、予備兵を合わせ五千足らずであった。

 
 王都では西からの報告を受け、民間人を主要都市へと避難させ始めた。


 しかし、多くの者が女であれ、老人であれ、戦える者は王都に留まる事になる。


 皆がこの國を、そして王を愛していたのだ。

 

 

 
 劣勢となった華國に助け船がやって来た。

 
 それは北東に位置する島国であった。

 
 何も大陸統一は華國と煌皇国の問題だけでは無かった。

 
 その国の名は「浮雲ノ国」

 
 四方を海に囲まれ、海底火山が多くあった海域にあった為、

 濃霧に覆われる事が多い島国であった。


 その為、過去には幻の島国として語られていた事もあった。


 華國とは海域も近く、ボーワイルド率いる艦隊に強制徴収された恨みもあったので三千の援軍を率い華國北西に着岸した。


 更に過去に幾度か地震災害時、華國から救援を受けていた恩を忘れていなかったのだ。


 大陸地図上では、北東に位置するが、実は西の海域を越えた方が近かった為でもある。


 島国にしてはかなりの数の援軍であったが、大陸統一の命運を分ける戦いであった為、

 浮雲島のほぼ全軍を捻出したのである。

 
 彼等が大陸に到着したのは西関所が破られたその日であった。

 
 彼等は大陸統一後に華國との関係を維持するという目的があった為、

 敗戦は許されなかった。

 
 一度華國に味方する以上、煌皇国から恨みを買う事を覚悟した上での出兵であった。

 
 彼等は後に華國の窮地を救う事になる。

 
 そんな中、敵の猛追を受ける部隊があった。

 その数400人。

 若き魔法使いが率いる三日月城塞守備隊であった。
 
 
 
 セブン率いる三日月城塞守備隊は撤退後、散々に打ちのめされた。


 後方に突如現れた騎馬軍の決死隊に退路を絶たれていたのだ。


 騎馬を多く持たず、怪我人の多い三日月城塞の戦士達の退却の足は遅かった。


 その間に煌皇国五大将軍フェネックが大陸西の海を越境し、

 海岸沿いの華國拠点を突破。


 山脈北側より回り込み、セブン達を待ち伏せしていたのだ。

 
 この時、セブン達の部隊はボーワイルドにより、第一級要注意対象とされていた為である。


 少数ではあるが確実に叩かねばならぬと考えたボーワイルドはフェネックに絶対全滅を命じていたのであった。


 西の関所である三日月城塞より王城まで三つの要塞の内、最も南に位置する城には煌皇国とフェネックの旗が翻っていた。


 これを見た西の関所より撤退したセブン達は驚いた。


カトリ
「城から煙が!それにあの旗!」

ウルブス
「烈風のフェネック率いる大地を揺るがす騎馬軍…

 セブン、退却を!

 奴等は城にこもるような部隊ではない!」

 
 しかし、ウルブスの助言は間に合いはしなかった。

 
 地を震わせ、煙を巻き上げ走る騎馬軍が奪われた華國軍要塞から突如現れた。


ウルブス「罠だ」

セブン
「退却、何処へ?

 南からはボーワイルドが!」


クロネ「北西へ!」

セブン
「北西…水晶山へ?」

カトリ
「このままじゃ踏み潰されるぞ!」


ウルブス
「山なら騎馬の理は無い!急ぎましょう!」

セブン
「分かった!全員北西へ!

 水晶山で迎え撃つ!

 馬を一頭借りる。

 ウルブス、ここの指揮を!

 カトリ、クロネ、双子は奴らの馬を潰してくれ!

 皆、行け!

 必ず戻る」

 そう言うとセブンは馬に股がり単身フェネックの軍勢に向かって行った。


クロネ「セブン!」

カトリ「クロネ、よせ!」

ウルブス
「ええい!

 もう遅い!

 急ぎ皆固まって走れ!」

 
 セブンは折れる事を知らぬ頑固者を引き抜き、馬の速度を早める。

 
 小さい頃に牧場で育ち、ピエロと旅をしたセブンは馬を操るのも上手かった。

 
 されどたった一騎。

 
 たった一人で五千もの騎馬軍に立ち向かっていったのであった。

 










 
 煌皇軍の五柱の一つ「疾風」

 人馬一体となり、平地を駆ける。

 フェネック率いる騎馬軍はあらゆるものを踏み潰して来た。


 戦場ではその機動力を生かし敵の背後に周り、大きな戦いでは必ず戦功をあげていた。


 その突進力と破壊力、速度は烈風の異名に相応しい物であった。


 フェネックが誇るのは騎乗能力と武力だけでは無かった。


 猛る騎馬隊を思いのままに操る事が出来るのだ。


 それは日々の連帯運動訓練の賜物であり、戦場を上空より見下ろしたかのような戦術の組み立て、

 それが彼の才能であった。


 彼が指示を出せば旗が上がり馬群はうねり、

 剣を抜けば一つの意思を持った生き物のように騎馬軍は敵を嵐に巻き込む。


 捕球路すら断った彼等は凄まじい速力で華國領内を駆けた。

 
 海岸の要塞を飛び越えると少数の志願者を送り出した。

 
 彼等は命と引き換えにセブン達を痛め付けた。


 残りの者は全て王都手前の要塞を見事に攻略する。


 海岸で奪った華國側の旗を掲げ少数が突撃、門を死力を尽くし開け放ち続けた。


 そこに流れ込むフェネック本隊。

 
 制圧した要塞内でセブン達を今や遅しと待ち構えていたのであった。

 
 そんな彼らに一騎駆けを行う若き命知らずな華國の兵士がいた。
 

フェネック
「一騎駆けか!
 
 魔法使いに違いない!

 今はまだ魔力が満ちているはずだ!

 下手に手を出せば食い破られる。

 
 奴を無視し敵の本体を叩く!

 全軍!我が剣を注視せよ!」

 
 フェネックはセブンが強者である事を察知し、

 剣を引き抜き切っ先を高く掲げる。


 その剣をフェネックの後続部隊が見つめた。

 
 対するセブンは馬上より魔法の詠唱を始め、

 龍魔法であるフレイムカノンをフェネックの一団に放つ。

 
 フェネックは剣を左右に振り、軍を二つに割った。


 被害を最小限に留めると猛烈な勢いでセブンとすれ違い、走り退却していた三日月城塞防衛軍に襲いかかった。


セブン
「行かせない!」

 セブンは馬を即座に返し、再度魔法を詠唱した。


煌皇軍兵士
「フェネック様!後方より光弾多数!」


フェネック
「やはり奴が!鬱陶おしい奴だ。

 攻撃中止!拡散しろ!」

 
 フェネックは剣を小刻みに降った。

 
 セブンが放ったのは魔力の弾を無数に打ち出す初級魔法マジックアロウを強化したマジック・ハンドレットアロウであった。


 大魔法使いをも手こずらせた魔法である。


 背後から放たれた百を越える強力な魔法の矢は、

 フェネック軍を襲ったが即座に散開した為、被害はまたもや押さえられる。


 セブンは逃げる仲間を援護するように魔法を放ち続けた。


 その為、フェネックはやむ無く一旦攻撃を中止し、

 軍を引いたがみるみる内に散らばっていた騎馬兵が終結していく。


 セブンは流石に止められぬと皆に合流するし、馬を降りた。

セブン
「皆、無事か?

 なんて用兵だ。

 まるで巨大な怪物を相手にしてるみたいだ」


カトリ
「隊長が弱音を吐くなよ、良くやってるよ。

 見ろ、また来るぞ」

 
 フェネックの剣がセブン達を差すと、再度大地が揺れた。

 
 セブンは大きな魔法を2つも使い、魔力が切れれば不味い事になると焦り始めていた。
 セブンの思惑は外れ、身をていした足止めは失敗に終わった。

 
 魔力を消費した割りに打撃を与えられなかったセブンは珍しく狼狽していた。

セブン
「魔法を放てばかわされる。

 くそっ!一体どうすれば!」


ウルブス
「例えどれ程騎馬術に優れていたとしても馬は簡単には止まる事は出来ません。

 
 それを利用すれば…あるいは大打撃を与えられるやもしれません」

ミニッツ
「俺達の精霊なら、足を止められるぜ。

 任せろセブン」


セコンド
「お前だけが成長してるんじゃないんだぜ」

セブン
「ミニッツ、セコンド…分かった。

 
 全員でミニッツとセコンドの召喚を援護する。

 
 クロネ時間を稼いでくれ。

 
 ウルブス、ピエロ、エイブルス、ボルト軍、ジェノスの部隊は前へ!

 
 他にも白兵戦に自信がある者は前へ!

 馬が潰れると同時に切り込む!

 
 カトリ!奴らに追い風を、馬の足を早めさせる!」


カトリ
「それでこそお前だ!

 恐いもの知らずで、それでいて俺達に頼って来る。

 それでいいんだ!」

 
 ウルブスはセブンの指示に呼応するように剣を抜き部隊の前に立った。


ウルブス
「死を恐れず戦え!

 背水の陣で戦え!

 五体に執着するな!

 腕を落とされようが、

 胸を貫かれようが、

 息の有る限り敵の足に食らいつけ!


 死にかけた友を踏みつけてでも止めを!

 
 生き残りたいのなら、

 今、命を捨てろ!」

 
 普段は温厚なウルブスの鬼気迫る激励は弱気になっていた皆を奮い立たせる。


 各団長達は前に出て勇ましく敵を睨み付けた。

 
 今まさにセブン達の絶体絶命の死闘が繰り広げられようとしていた。

 



 カルパトス平原と呼ばれる草原は、セブン達を中心に至極緩やかなすり鉢状の平原であった。


 坂になっている事に気づく者も少ない程であった。


 その中央で少数の部隊にいま正に、騎馬の大軍が襲いかかろうとしていた。

 
 先陣を切ったのはクロエ。

 
 彼女は双子が上級精霊を呼び出すまでの時間稼ぎとして死霊を呼び出した。


「黒の尻尾」と呼ばれるそれは華國の伝承であった。

 
 姿を見た者は無く、尾しか見られた事が無いと言う獣の怨霊が集合したものであった。


クロエ
「これなら馬の足に負けない!」

 
 クロエが召喚した黒いモヤからは黒く長い尻尾がユラユラと生えている。


 どうやらクロエに擦り寄って甘えているようだ。


クロエ
「お願い!あの馬から私達を守って!」


黒の尻尾
「ゴロゴロ」

 あらゆる動物の喉を鳴らし黒い尻尾は突進する。

 
 その大きさは牛よりも巨大に膨らんでいった。

 
 騎馬軍を操るフェネックはその異様な者を避けようとした。


フェネック
「相手にするなよ!」

 
 騎馬軍を二等辺三角形の突撃陣形に展開したフェネックは危険を感じ陣形中央にまで下がっていた。


 目の前で凄まじい悲鳴が上がる。

 
 黒い尻尾のモヤに包まれた者が次々に悲惨な姿になり落馬していくのだ。


 その傷痕は噛みつかれたり、引っ掻かれたり等、無数の怪我をおっていた。


 フェネック自身は寸での所で避けた。

フェネック
「気味の悪い!

 陣形を組み直しつつ、敵に突撃をかけるぞ」

 
 煌皇軍はセブンの部隊の回るように時計回りに円を描き走った。

 
 セブン達を守るように黒の尻尾はフェネックの右翼側を襲い、突撃のタイミングを奪う。


 フェネックは業を煮やし、構わず突撃命令を下した。


セブン
「来るぞ!

 防御陣形のまま突撃準備!

 カトリ!」

カトリ
「分かった!」

セブン
「ミニッツ!セコンド!」

ミニッツ&セコンド
  「……来たれ…」