勘違いしそうになる。


昔と何も変わってないのだ、と。

まだ汚れる前の俺のままなんだ、と。



「…佐藤?」


芹沢の声に、冷静を取り戻す俺。

そうだ、昔とは何もかもが違う。

今更戻れない。

綺麗な俺にはなれない。


「昔とは違う。

私は何もかも変わってしまった。

もう昔の『佐藤 トモキ』ではない。


…そう、私は“佐藤病院院長”だ。」

「そうやって無理矢理思い込んで、自分を追い込んで。

それが“成長”?

違うだろ。」


「無理矢理思い込んでなんかいない。

私に名前はない。」




あるのは、“佐藤病院院長”という肩書きだけ。