「「えー」」
二人分の非難の声。
何?あたし悪いことした?
先輩をキッとにらむと、チョココロネを受け取ろうとしていた右手は、それを通り越して美菜に向かった。
「じゃあ、気持ちだけもらっておくね」
先輩の手が、美菜の頭をふわりと撫でる。
美菜は、せっかくのチョココロネを、ぼとりと落とした。
袋の中で、チョコがはみ出ている。
食べられなくなったわけではないけれど、希少価値が高いだけに、残念な姿だ。
「ああ、コロネ……」
けれどチョココロネの容態を案じていたのはあたしだけで、鈴音さえも、東郷先輩のしなやかな動作に見惚れていた。
みんな、駄目だよ、見た目に騙されてるだけだから!