「うーん、相変わらずすごい人」


言ったのは、鈴音ではなく東郷先輩。

「え」とあたしと鈴音の声が揃い、二人分の視線が東郷先輩に向けられる。

だって、チョココロネを買いに来たはずなのに、こんなところでのんきにしていていいわけがない。


「先輩、行かなくていいんですか?」


鈴音が遠慮がちに尋ねる。


「食べたいんだけどねぇ」


のんびりとそう言ったところに、美菜が戦利品を手に戻って来た。

ヒットポイントが50くらい減っていそうな顔をしている。

その後ろで、「チョココロネ完売しましたー」という売店のおじさんの声。


「あーあ、残念。食べたかったのに」


相変わらず、のんびりとした口調で、東郷先輩はさして感情の無い声で言う。

間違いない、この人、ただおもしろがってついて来ただけだ。