「何でだろうって、ちょっと不安になっちゃって。人それぞれのペースがあるって、鈴音が言ってくれたのにね」
「ん……わかるよ。人の気持ちって、目に見えないから」
自嘲気味のあたしの言葉に、しかし鈴音は頷いてくれた。
窓から眼下に見る中庭には、今日もたくさんの人。
でも鳴海先輩と東郷先輩はいなかった。
あのベンチには、女の子の三人組が座っている。
その姿が、あたしと鈴音と、そしてここにはいない美菜に重なる。
「美菜って昔、何かあったの?昨日、様子がいつもと違ったから」
「ああ、気付いたか。美菜ってわかりやすいもんね」
そして鈴音は、ごく簡単に言う。
彼女のいないところだからという配慮のためだろう。
「昨日言ってたこと。美菜の実体験なの。あんな言い方だけど、杏奈を心配してのことなんだ。許してあげて」
そう言った鈴音の表情は、とても大人びていて、そして愛情に満ちていた。