告白。あたし伊田杏奈は、恋人である小野雄平と、まだキスもしていません。
「え……。あ、そうなんだ」
さすがの鈴音も、一瞬言葉に詰まった様子。
あんな話をしていたというのに、実はその何歩も手前で足踏みしていると知ったのだから、拍子抜けするのは無理もない。
翌日の昼休み、また鈴音について図書室に来ている。
鈴音が本を選び終えるのを待って、窓辺で打ち明けてみた。
幸い辺りには人がいなく、けれど声をひそめて。
聞いてほしいことがひとつ、あったから。
「あたしね、意外だったんだ。雄平って、ノリは軽いし、簡単にあたしに触ってくるから」
だから、キスもすぐにするんだと思っていた。
それが自然な流れに思えた。
けれど、雄平は未だにあたしにキスをしないし、そんな素振りも見せない。
平気で抱きしめてくるくせに、だ。