空気がひりつく。
美菜の言葉が、じりじりとあたしの内部に食い込んでいく。
鈴音が再び美菜をにらんだ。
「美菜」
「……だって」
でも美菜は、今度は口を尖らせた。
何か苦い過去があるのかもしれない。
気まずい雰囲気になろうとしているのが、誰にもわかった。
それを回避しようとしてなのだろう、他のメンバーがおどけて言う。
「でもさ、そろそろかもよ」
「杏奈さん、心の準備は?」
マイクを持つ仕草をする手が、顔の前に差し出されている。
「ええと……ノーコメントで」
「それは無いよ、杏奈ー」
「美菜と鈴音以外で、最初に脱・処女する有力候補なんだから」
「なんだそれっ」
笑いに包まれて、雰囲気が元に戻る。
でも、美菜が再びこの話題に首を突っ込んでくることはなかった。