一瞬の間ができる。

最初に口を開いたのは、美菜だ。


「え、まだヤッてないの?付き合って二ヶ月くらい経つんでしょ?」


呆れたような言い方が、なんだか胸に刺さる。


「美菜、自分のものさしで測るなって、いつも言ってるでしょ。ペースは人それぞれなんだから」


鈴音にぴしゃりと言われて、美菜は小さくなる。


「はぁい。杏奈、ごめんね」

「ううん。でも……」


こんなこと、考えたこともなかった。


「あたしって、普通より、遅い?」


自分が、普通か、普通じゃないか、なんて。


「あたしは遅くないと思うなー」

「あたしも。初めてだったら、付き合ってから半年くらいは待ってほしいかも」


何人かがそう言ってくれて、ほっとする。

けれど美菜は、やっぱり違っていて。


「でもそれは女の子の考えでしょ。思春期の男の子にオアズケさせるのって酷じゃん。そのせいで浮気されても嫌だし」