休み時間にトイレから戻ると、廊下に雄平の姿を見つけた。
男子数人で話をしているから声はかけないけれど、こうしてふいに顔を見られるとうれしくなる。
雄平とは、出会ってから初めてクラスが分かれたことになる。
中学校はずっと同じクラスだという腐れ縁が、ついに三年で終わってしまった。
高校一年生の今、あたしはA組、雄平はE組。
教室が離れていることもあり、どちらかが会いに行かないと、偶然見かけることも少ない。
「杏奈、ちょっと待って」
教室に入ろうとするところを、呼び止められた。
雄平はみんなの輪からはずれて、あたしの方へと向かってくる。
「雄平。みんなと話してたから声かけなかったんだよ」
かわいくない言い方だな、と思う。
来てくれてうれしい、と言えばいいのに。
そんなあたしにひきかえ、雄平はどこまでも素直だ。
「いいのいいの。ほんとは杏奈に会いに来たんだもん」
ああ、もう。
照れくさいことを、サラリと言ってくれちゃうんだから。