「あ、伊田ちゃん」
笑顔を浮かべ、ひらひらと手を振っているのは、鳴海先輩だ。
「なーに?伊田ちゃんと沙良ちゃんって友達だったのぉ?」
沙良……リーダー格の、この人のことか。
彼女は舌打ちをして、あたしを押しやるようにして手を離す。
おかげであたしは、背後の壁に背中をぶつけた。
「行くよ」
沙良先輩は他の人達を引きつれて、鳴海先輩を一瞥してから立ち去った。
その背中を見送ってから、あたしは鳴海先輩に向き直り、
「あの……ありがとうございました」
小さく頭を下げるけれど、彼女は微笑むだけだ。
大丈夫か、とも聞かない。
その綺麗な顔の下で、いったい何を考えているのだろう。