「モ~モ~ちゃ~ん?」
「アハハ、ごめんごめん!」
「………。まあ、いーけどさあ……。」
どうせ、夢には違いないし。
言っても、彼は確かにオアシスであり…、つまりは、目の保養。
同じ人間だけど、 万年成績トップの彼はまるで別次元の人で……
住む世界が違うって、ちゃんと…解っている。
高1の頃からただ一方的に見ているだけの…いわば、憧れの君なのだ。
「お前…、瀬名にマジだったわけ?!」
今度は、力が…
ゆらゆらと、肩を揺らす。
「も~…、蒸し返さなくていいよー…。トリオの返上なんてしないっつーの!」
「だよなあ、だよなあ~!やっぱりきんはそうでなくちゃ。俺は型に嵌まらないお前が好きなんだよ。」
「「………………。」」
『……ん……?好き?』
モモちゃんと顔を合わせると、
「いや、違うから!性格だ、人柄が…だ。なあ、モモ。そうだよな!」
慌てふためく…力。
「やっぱこれとひとくくりにされるのは……癪だわ。」
「…モモ!おま……」
「…………。じゃあ私、勉強するわ。お先に失礼。」
「「…………きん………?」」
私は二人に背を向けて。
英単語カードを片手に……窓際へと向かう。
窓の外には、グランドを走る生徒達の…姿。
「………いた。………格好いいなあ。」
頭一つ飛び抜けている彼を見つけるのは容易く、どこにいても、どんなことをしていたって…
目立ってしまう。
「……9組、体育なんだあ…。」
「瀬名くん、格好いい~…!!」
むろん、私のみに限らず。
彼の女子から受ける集中砲火は…半端ない。
私はこうして、大勢の中の……一人。
見つけてもらうことさえ…できない。
「…ちょ…、今、白川さん瀬名くんにタオル渡した!」
「やだあ、笑ってるし!」
彼の側に寄り添うのは、さっきも一緒にいた…綺麗な女の子。
すらりと背の高い、女子力高めな……。
「いいなあ、あの人、同じ特進の人だよね。」
「チキショー…、お似合い…。つーか、やっぱ男ならああいう子がいいよね、きっと。」
クラスメイトのそんな会話をききながら、私は…ますます卑屈になりそうで。
「……わかってるもん。天と地がひっくり返ったって…。彼に近づけることなんてないよ。」
自分に……最もなご意見を課せる。
「……きん、アンタ本気だったの?まあ、元気出して!!」
どうやら…独り言は筒抜け。
クラスにどっと笑いが…起きる。
「…………。………世知辛いなあ…。」
結果…、
私はガックリと肩を落とす羽目になったのだった。