「えー?…あ、ほんとだ。
 知らない顔だけど」

「え!?知らないの?!」


 ―ビクッ

 体が震える。


「な、何さ2人して…有名なの?」


 信じられないという顔で(ミーハーな)チカが説明してくれた。


「あの人たちはうちの幻のバンド!
 たまーに歌ってくれるんだけど
 どこで歌ってるのかもわからないし
 歌ってって言っても絶対歌ってくれないの。
 ただ、軽音部とかもないから
 いっつも楽器持ってるあの人たちがあのバンドじゃないか、って言われてて…
 ほんとにあの人たちだったんだねぇ…」


 最後は自分で納得したように事細かく説明してしめた。

 あたしはただ、「ふーん」と言って

 一瞬見ただけですぐに目を逸らした。



 2人がずっと見ていたのにも気付かずに…



 気が付いたのは大分離れてしまってから。


「マナー?チカー?
 行かないのー?」