だから余計、涙が溢れた。


「なんで…なんでよぉ…ッ!」

 幸せを掴もうとすると…ほら、手から零れ落ちていく。

 手放したくなんかないのに…

 小さな幸せで、満足してたのに。


「ただ、幸せになりたいだけなのに…ッ!」

「…ッ」


 こんなこと春樹に言ったって、どうにもならないことくらいわかってる。

 でも、思っちゃうんだよ。

 何であたしばっかり…って。

 嫌なことがあるのは、あたしだけじゃないのに。


「落ち着けって」

「っふぅ…はるきぃ…ッ!」


 欲しいもの全て、消えていく。

 大切なことばかり無くなっていくの。

 その度にあたしは、自分じゃなくなっていく。


「ライブ、したかったよぉ…ッ!!」

「うん、…うん」


 ゆっくり手で背中を擦ってくれる。

 春樹もいつか、あの人とみたいにいなくなっちゃうの…?

 いなくなってほしくなくて、

 消えてほしくなくて…

 ぎゅっと、胸元を掴んだ。