―パンッ
ピストルが鳴って、すぐに走り出した春樹。
「すご…浦川くん1位だよぉ!」
「はやーいっ!」
「浦川くん頑張れーッ!!」
あちこちで春樹を応援する声が聴こえる。
だんだん近付いてくる春樹。
「春樹…っ、頑張れ…ッ!」
周りに掻き消されてしまったあたしの小さな勇気。
でも…、君は気付いてくれたのかな?
一瞬、あたしを見て笑った気がした。
いつも春樹の笑顔を見るとあの人の笑顔と重なった。
でも今は、さっきは…少しだけ春樹の笑顔を見た気がするよ。
そして…とうとう、借り物競争!
先生のヅラとかだったら一応私立だから貸してくれるはず!
あたしの順番は1番最後。
それまで暇なんだけどね。
「瀬戸 藍架!
やっと出てきたわね!!」
「…は?」
名前を呼ばれてそっちを向く。