先ほどの会話から五分。
俺と隣の女の子...■は"立ち入り禁止"の張り紙がされた扉の前に立っていた。

「お、おい...これなんか出そうだろ...
戻ろうぜ?」

目の前の扉は古くなっており、木でできた扉は所々表面が剥がれ落ちていたり、穴ができていたりした。
鉄でできたドアノブは半分壊れて中が見えている。

俺の隣で束になった鍵を鍵穴に差し込み、これじゃない、あれじゃない、と繰り返していた■は、んー、と首を振った。
ちくしょう、これで解剖なんかされたら呪ってやるからな、と謎の決意をしたと同時に隣からあった!と声が聞こえた。
何本もある鍵の束から鍵を見つけた達成感に満ち溢れた笑顔で■が鍵穴に刺さった鍵を回すと、特徴的なガチャリという音が聞こえた。
壊れたドアノブを回し扉を開けると、ホラー映画でありがちなギィー...という音が蝶番から聞こえた。ますます怖くなってくる。

「はい、乗って。」

「.........は?」

そう言うと■は両手を差し出した。
それは言うまでもなく、お姫様だっこしてやるよ、という意味だった。

「いやいやいやいや!?普通に進めるよ!?」

俺が心底驚いたという表情で言うと、■はじゃあ降りてみる?と扉の前に俺を突き出した。

...降りる?

ーー扉の向こうは上下左右壁はなく、ただただ無が広がっていた。
それを前にやっと「降りる」の意味を理解した。
男、年上としてのプライドはあるが、止むを得ない。無言で■に抱きかかえられる。

「じゃあ降りるよ。目ぇ、つぶっとけば?」

その声が聞こえた直後、■と俺は宙に浮き、扉の向こうへと急降下していった。

「うわああああ!うわあああああああ!」

情けなくも悲鳴をあげると後ろ上部からはバタン!と扉の閉まる音が聞こえた。

「ひいい!なにあれ!勝手にしまったぞ!?」

恐怖で大声を出してしまう。声は響くわけでもなく、吸収されたかのようにすぐ消えた。

「だああ!うっさい!目ぇつぶってればって言ったでしょ!すぐだから!」

■の説得も聞くはずもなく、悲鳴をあげつづける。こいつは怖くないのだろうか。

下の方から白い光が近づいてくるのが見えた。
ーーああ、これが最期ってやつなんだな。と本日二度目の最期を悟る。

次の瞬間、ばっと視界に白が広がったと同時に俺は意識を失った。