...
......俺、確か倒れて...。

俺が目を覚ました時には、すっかり空も暗くなり、夜になっていた。
見回すと異色の液体や何かの生物などがところどころにある不気味な研究室のようだった。
確か倒れたのは学校のはず。ここは一体どこなのだろう。

そんな自問自答を繰り返していると、人の声が聞こえた。
なんとなく慌てて目を覚ましていないフリをする。

「この人、あの魔薬使ったっぽい。薬の匂いがする」

...魔薬?何のことだろうか。

「...そう。じゃあ私の部屋に連れていっといて。」

部屋?部屋ってなんだ。俺はどうなるんだ。

「オッケーわかった。連れてっとくね」

その声と同時にズカズカと足音が近づいてき、俺の真横で足を止めた。
おい待て、このままでは俺はどこかへと連れていかれる。これはヤバイ。

危険を察知し、俺の脳はフル回転を始める。なんとかこの状況を変える方法を考えるんだ。

1、今すぐ目を覚まし逃げ出す。
...いや、ここがどこだかわからない以上、自宅に逃げ帰るのは不可能だ。

2、この俺の隣の人物に帰り道を聞く。
...ここは怪しい研究室だったはずだ。きっと俺を解剖だのなんだのするつもりだろう。そんな相手に道を聞いたところで何の利益も無いだろう。

3、

そこまで考えたところで、俺の体が宙に浮いた。持ち上げられたのだ。終わった。

「うおお...、軽いね、この人。見たところ男だけど、筋肉がないね。」

痛いところをつかれた。そこは割と俺自身気にしている。
いや、そんなことよりも声からして10代の少女だ。それも小学生くらい。
小学生の少女が高校生男子の体を持ち上げられるだろうか。
答えはNOだ。やはりここはヤバイ場所だ。先が見えない。

とりあえず相手の顔を確認しようと薄く目を開けると、俺は相手の肩に乗せられ、後ろ向きにされている状態だった。
そしてここは先ほどの研究室を出た廊下らしい。後方に"研究室"と書かれたプレートが掛けられた扉が見える。

首を曲げ、薄目で相手を見ると、相手の頭には、まるで獣のように毛が生えた......耳......。

「耳ぃ!?」

驚きのあまり声が出てしまう。ハッとし、手で口を抑えたがもう遅い。その頭の耳がピクッと動いたのが見えた。

「あれ?なんだ、起きてるんじゃん。じゃあ歩いてよね!」

少女はくるっと首をこちらに向け、不満そうに言った。
と同時に、どさっと地面に落とされる。
もう少し優しく扱ってくれないか。