何度も開け閉めされ劣化し開けづらくなった保健室の扉を開け、保健室へと踏み込む。

「失礼しま〜す...っと、」

静寂。
どうやら誰もいないようだ。
仕方ない、自分で手当てするか......。

「え〜っと、消毒液消毒液」

片っ端から戸棚や引き出しを開けたが、どこにも見当たらない。ちょうど消毒液がきれているのだろうか。

ふと、机の上に置かれた木箱を見つけた。鍵も何もない、普通の木箱。もしかしたらあれに消毒液が入っているのだろうか、と手を伸ばし、木箱を手に取る。
蓋を開け、中を覗く。

「...?なんだこれ」

中に入っていた小さい瓶のようなものを手に取る。便には無色透明の液体が入っていた。ラベルが貼ってあるが、どこの国の文字だろうか。読めない。

「これ...消毒液か?」

説明書とかは入ってないのか、と木箱を覗いてみるが、瓶の他には何も入っていなかった。

「.......こういう時は使うが吉、よし、使おう。」

決心をし、瓶の蓋を開ける。匂いはない。
机にあったコットンに液を染み込ませ、傷口の血を拭い取り絆創膏を貼る。

「よし、完了!」

コットンをゴミ箱に投げ入れ、瓶の蓋を閉めようと蓋を手にとる。が、手が滑り蓋は手から転がり落ちた。
転がり落ちた蓋は床をコロコロと転がり、壁に当たってその動きを止めた。

蓋を取ろうとしゃがんだが、瓶を持っていることを忘れ、手を斜めにしてしまった。蓋のされていない瓶からは液体が重力に従い、俺の顔へと降り注いだ。

「う、わ...!口にっ...これやば、うわ、」
口に入った液体に味は無いが、謎の液体ということもあり、一気にパニックになる。

慌てて口をゆすごうと水道を目指すが、力が抜け、その場に倒れこむ。

「なんっ...これ、力が入らね、ぇ....」

次第に意識は朦朧とし始める。
あの液体はヤバイ液体だったのだろうか。もしかして意識を失ったらこのまま目を覚まさないかもしれない。
母さん、今までありがとう。俺は幸せだった。
最後に家族へのメッセージを心の中で呟き、俺は意識を失った。