「でーっきた!」

そう言い、目の前の人物は座席に座った俺の前髪から手を離す。

「可愛くなったよ!●!」

手渡された折りたたみ式の鏡を覗くと、前髪がリボンで結われ、いかにも女子力満載の男の娘ですぅ、と言わんばかりの髪型になっていた。
周りからも笑いの声が聞こえる。

「あのなぁ、▲......」

そう言い目の前の人物......クラスメイトの▲を睨むが、▲は悪びれる様子もなく、満足そうに笑みを浮かべ、携帯で写真を撮ろうとしている。

「おい、撮るな、って......うわっ!」

▲の携帯を取り上げようと席を立つと、思いっきりバランスを崩し転倒。
さらに机に置いていた教科書やらノートやらが俺の腕に直撃。しかもかど。
周りからはバカ男子の大笑いする声やクスクスと笑う女子の声。最悪だ......。

「...っ、ってぇ......」

床に強打した右腰のじんじんという痛みに声を漏らし立ち上がると、左腕の皮膚が剥け、血が出ていた。さきほど落ちてきた教科書のせいだ。許さん。

とりあえず消毒して絆創膏を貼らなければならない。俺は保健室に行く、と▲に伝え教室を出た。