椎名さんはしばらく何も言ってこない。
この沈黙が怖い。




今まで散々突き放していたくせに今さら友達になりたいなんて、都合がいいのもいいところだと思う。




何を言われるのか怖くて、下を向く。




「…え…?」




俯いていると、椎名さんに手を包み込むように握られた。




顔をあげると、椎名さんは満面の笑みを浮かべていた。




「…これからよろしくね、愛羅ちゃん!」




涙が出そうになった。
こんな世の中にも、素晴らしいと思えることがあったんだ。




友達。
お母さんお父さんあたし、高校に入って最初の友達ができたよ?




誰にも頼らずに生きるなんて、最初からむりだったんだ。




人は誰かの支えや、誰かに頼らないと生きていけない。




あたしは最初から、こんなにもいい人達に支えられてきたんだね。




この繋がりは絶対に失くしちゃいけない、強く思った。




それと同時に新たなスタートをきろう、そうとも思った。