「…早く冷めねぇうちに食わせろ」
急かすように和穂の表情は鋭い。
でも口角は若干上がってる。
…なんでこんな悪魔を好きになっちゃったかなー。
あたしは後悔しながらお粥をお椀に盛った。
そしてスプーンに一口取ると、和穂の方を向いた。
「…はい」
スプーンを和穂の口に近付けても、和穂は口を開かない。
…クソッ。ほんとに何がしたいの、この悪魔は!!
無理やり口に入れようとスプーンでグリグリ口を抉っても、和穂の口は開かない。
「…ちょっと!口開かないと食べさせられないでしょ!?食べる気あんのか、このクソ悪魔!」
さすがのあたしもキレる。
でも和穂はニヤリと笑って、あたしの耳に顔を寄せる。
「…あーんって言って食べさせろよ」
「…ひゃあっ!」
耳元で囁かれた挙句、耳たぶを甘噛みされた。
病人だからって調子に乗りやがって………!
ガチで怒ってやろうかと思ったけど、あたしが「あーん」と言うまで耳を舐めるのをやめなさそうだから諦める。
あたしは耳元にある和穂の顔を、力ずくであたしと向き合うように戻す。
そしてスプーンの上でぬるくなったお粥を和穂の口に近付ける。
「…はい、あ、あーん?」
恥ずかし過ぎて疑問系になってしまった。
それでも和穂は満足したのかククッと笑って、やっと口を開いた。