その困った笑顔も反則だけどね。
そんな言葉は心の中にしまっておく。
携帯のブザーが鳴ってるのが聞こえた。
あたしは教室に置いてあるし…
椋太郎が携帯の画面を覗く。
久しぶりにすぐに電話に出た。
椋太郎があたしといるときに電話に出るときは
大体仕事の電話だ。
だから黙って右耳についてる椋太郎のピアスを監察していた。
「もしもし?」
あー、うん、なんて言ってる。
「合コン?…」
その言葉にあたしはフリーズした。
「は?キャバ嬢と?」
…誰と電話してるの、椋太郎くん。
服の袖をぎゅっと握ってしまう。
椋太郎はそんなあたしを見て少し笑うと、あたしの頭に手を置いた。
「課長が?ああ…」
その笑顔が少し曇る。