あたしはその場から逃げるように離れた。
少しだけふてくされた。
「…バカバカバカ」
小さく三回言う。
ほんと、何回あたしもこんなことで拗ねてるのかな。
そのたびに椋太郎が来てくれるから。
…甘えてるなあ、なんだかんだ。
そう思ってふと後ろを向いた。
椋太郎の背中を見つめる。
机に肘をついて話し込んでる。
ふと、椋太郎がこっちを向いた。
「店員さん、注文していい?」
あたしに向かってそう言う。
「え、うん」
ボールペンと用紙を取り出した。
「藪塚唯花」
「…は?」
「だから、藪塚唯花。一人、注文」
「そんなメニューないし」
椋太郎はじっと見つめる。
「あるよ、だってここにいるじゃん」
立ち上がってあたしの手を掴んだ椋太郎。
そのままあたしを引っ張っていく。
「人が少ないところは?」
「屋上…かな」
手をぎゅっと握ると、階段を上がっていく。
「高校とか懐かしいな、」
「おっさんだもんね椋太郎」
後ろから見えた椋太郎は笑ってるように見えた。