「気持ちいいですね」

「…そうだな。…本当に久しぶりだ。

海も…こんなに穏やかな時間を過ごすのも」


そう言った飛鳥さんは、ピタリと足を止めた。

それに合わせて、私も足を止める。


「飛鳥さんは大きな会社の社長さんですから、

仕事に追われてばかりで、こんな時間を取るなんて、

無理ですよね・・・飛鳥さん」


「・・・どうした?」

…目線なんて、合わせられない。

好きだと言ってくれてるけど、いざ自分の気持ちを

言うとなると、緊張で息が詰まる。


・・・でも、今が告白の時だと思った。


「飛鳥さんの穏やかでいられる時間を、私も一緒に、

過ごしたいです」


「・・・薫子?」


「私、飛鳥さんの事・・・」


告白しようと思ったのに、邪魔が入った。

・・・邪魔者は、携帯電話。


「・・・薫子、携帯が」

「あ、…でなくちゃ、ですね」

大きな溜息をついて、それに出た。