6階から、下へと降りると、外にはもう、

飛鳥さんの車が止まっていた。

「ごめんなさい、お待たせして」

私は運転席の窓越しに謝った。


「いや、俺も今来たところだ、…じゃあ、行こうか?」


「はい」

私はニッコリ微笑んで、助手席に乗り込んだ。


車を走らせながら、飛鳥さんが質問してきた。

「薫子はどこに行きたい?」

「どこ、ですか?」

質問に質問で返すと、飛鳥さんは前を見たまま頷いた。

…どこと言われても、何も浮かんでこない。

デートスポットなんて知らないし、

彼氏が出来たらあそこに行きたいと言う場所もない、

と言うか、考えた事もない。


「薫子?」


「・・・海に」

「・・・海?」

精一杯頭を働かせて出てきた答えは、それだった。

今は5月。まだ海で遊ぶには肌寒い時もある。

と言うこは、人気はほとんどないはず。

飛鳥さんは、会社の社長さんで、人の多いところは、

私と2人じゃ、変な噂が立つといけないし。