『エ、はい、たぶん』

・・・たぶんってなんだ?

ちゃんと返事を聞いたのなら、たぶんなんて言葉は

絶対に出ないはず。

・・・もしかしたら、断られたとか?

…もしくは、嫌な顔をされたとか?

最悪な事ばかり考えてしまう自分。


…俺って、こんな男だったか?

…いや、いつもの俺ならこんなにマイナスな事は考えない。

すべてにおいてプラスになるものの考え方をしていたはずだ。

それなのに、彼女の事になると、

いつもの自分じゃなくなる・・・

本当の自分は、こんな人間なのかもしれないと思うと、

少し可笑しかった。


…午後7時15分。

もう、彼女は来ないのかもしれない、そう思った。


「・・・遅くなってすみません」

突然、可愛い高いソプラノの声が、頭上に降ってきた。

俺はそっと顔をそちらに向けると、

待ち人が、申し訳なさそうな顔をして立っていた。


嬉しいくせに、俺は気持ちとは全く真逆の事を口にする。

もちろん彼女はビクついている。

俺は彼女を怖がらせるつもりなどないのに・・・

いつものように対応できれば、こんな態度は取らないのに。

彼女の顔を見ると、意地悪になってしまうのはなぜだ?

自己嫌悪に陥りながら、話しを進めていく。