男を見ないように、薫子に視線を移す。

コロコロと変わる彼女の表情は見ていて飽きなかった。


「…社長、彼女にゾッコンですね」

「なっ・・・」

突然石坂に言われ、言葉を失う。

あぁ、そうだよ、俺は彼女にゾッコンだ。

だからと言ってそれを口にすることはできない。

…立場上。


「昼食がいいチャンスだと思ったんですが・・・

申し訳ありません」


「…いや、別に謝らなくても」


「次は、成功させますから」

石坂の張り切りように、俺が引き気味。


「石坂、そんなに頑張ってくれなくていい」

「ダメですよ。彼女、入社式以降、注目されてるって知ってました?」

「・・・え」


「普通にしてても可愛いし、笑顔になったら、

男はイチコロってくらい、可愛いじゃないですか?

だから、ボケッとしてると、誰かに持って行かれますよ」


「・・・」

それは困る。

だからって、どうやって彼女と話をする?