オレの予想通り、石坂はかなり驚いた表情だった。

今までプライベートな事を、石坂に言った事など

ただの一度もない。石坂はオレの秘書なだけで、

友人と言うわけじゃない。

それに、女性関係を相談するほど、困ったこともなかった。


「…悪かったな、プライベートな事だ。

聞き流してくれ」


そう言ったオレは、書類に目を落とした。

やっぱり言うんじゃなかった。

そう思っても、もう言ってしまったものはしょうがない。


「…社長」

「…なんだ?今の話しはもういい、ちょっと言ってみただけだから」

そう言って仕事を続ける。・・・が。


「社長が女性の事で悩むこともあるんですね」

石坂の言葉に、眉をひそめる。

すると石坂は慌てて否定を始めた。


「ちょっと驚いてただけなんです。別にバカにしてるとか、

そんな事はこっぽっちも思ってませんから」


「…じゃあ、なんだ?」


「そう言った類の事は、自分でいつも完璧にこなしていそうな

感じでしたし・・・だから、言ってもらって嬉しかったんですよ。

秘書の仕事以外で社長のお役にたてると思うと、

果然張り切りますよ」